春香さんは普通の子! だがそれがいい!

 アニマスの感想を。
 最終話のネタバレを含みますよ、念のため。
 
 思えば、第一話を見た感想が、
「すげえ、ニコマスみたいだ!」
 だったのを思い出します。
 
 春香さんがどんがらし、ハム蔵が脱走し、あずささんが道に迷い、雪歩が穴を掘り……。

 ニコマスと違うなあ、と思ったのは、伊織が子どもっぽいことくらいでしょうか。
 
 その時は、
「いやいや逆だ逆。ニコマスが、アイマスの設定をきちんと踏まえて作られてきた、ということだよ」
 と、思った……の、ですが……。
 
 実は逆でもなかったのかも知れない、というのは後述します。
 
 それはさておき、中盤まで見て思ったのは、
「ああ、春香さんって、本当に765のリーダーなんだな」
 ということでした。
 
 アニマス765プロが問題に直面した時って、以下のような感じかな、と。
 
・みんなが落ち込む。
 ↓
・春香「ねえみんな、こういう風に考えたらいいんじゃないかな? きっと、悪いことばかりじゃないよ!」
 ↓
・千早「……そうね。春香の言うとおりだと思う。落ち込んでいるばかりじゃ問題は解決しないわ。今、私たちにできることをやりましょう」
 ↓
・やよい「うっうー! がんばりまーっす!」
 
 みんなに元気を提供するのはやよいの役目かと思ってたけど、やよいだけだとパワーはあってもどっちに向かうのかが定まらないので、みんなの思考を建設的な方向に向けるのには春香さんが必要なのだなあ、と。
 
 で。
 終盤についてですが、その前に、ニコマスについて以前からずーっとひっかかってたことがあります。
 
ニコマス765プロは、芸能プロダクションと言うより学生サークルみたいだ」
 という指摘です。
(どこで読んだか忘れました)
 
 全くその通りで、765プロは企業であるはずなのに、少なくともニコマスでは、所属アイドルが鳴かず飛ばずでもプロデューサーも社長も本人もわりとのほほんとしているし、会社は潰れないし、お金の話は生臭い形では出てこないし、仕事や営業やレッスン風景よりもむしろ「同僚」であるアイドル同士やプロデューサーや小鳥さんがだらだらしたりキャッキャウフフしたりしてることの方が多いというかほとんど常にそんな感じみたいだし、売れっ子になってもあんまり忙しそうに見えないし、いつまで経っても765プロは雑居ビルの間借りだし……。*1
 
 これは、作者であるニコマスPが、芸能プロダクションの仕事に詳しくなかったり、そもそも社会人でなかったり、社会人だけどそんな生々しい仕事風景を趣味のニコマスでまで描くとかまっぴらだよ! とかいろんな事情があると思うのですが。
 
 しかし、アイドルたちの仕事が忙しくなって、お互い顔を合わせるのもスケジュール的に難しくなって、誰かの調子が悪くなっても遠くで心配するしかない……なんて、ある意味当然のはずですが(だって「同僚」に過ぎないんだから)、でもそんな765プロは見たくない、という思いはみんなあると思うのです。
 
 でも、それってある種の逃げなのかなあ……などともやもやしていたのですが……。
 
 そんな思いを抱えていただけに、アニマス終盤の展開は
「うわわあああ」
 という感じでした。
 
 見たくない765プロを見てしまった……ということではなくて、
「春香さんこそが、アイマス世界の中にいながら“そんな765プロは嫌だ”と思ってる人だったんだ!」
 という驚愕。
 
 ミュージカルの主役争いの前後、春香はみんなに、いわば「仲良しグループ」的であることを求めます。
 それが甘えだと言うのはまったく正しいかも知れない。
 仕事としては。
 
 でも、春香の好きな765プロとは、「仲間だもんね!」の世界であり、学生サークルみたいな集団だったのだと思います。
 
 春香は「普通の子」なんだから。
 
 普通の子である春香が、遠距離通勤で、学生生活もおそらく相当犠牲にして毎日765プロに通い続けられたのは、そこがただの「職場」ではなかったからなのだ、とあの時気づきました。
 
 そして、765プロのみんなを精神的にまとめ、支えてきたのが、まさにその春香なのですから。
 結局、765プロがあのような形であるのは必然だったのです。
 
 最終話「みんなと、いっしょに!」の結末では、765プロの全員が勢揃いし、「生っすか!?サンデー」も再開される……という、春香や私たちが求めていた、「仲良しサークル的765プロ」に回帰します。
 そして、人気アイドル集団が、仕事をさておいて、社長やプロデューサーを含めた765プロのみんな(……といっても、人数は全員顔見知りな規模のまま)で花見に出かける、という、ニコマス的イベント。
 
 さらにもうやりすぎじゃないのか、と思ったのは、社屋の移転が計画されるも、黒井社長に妨害される、という展開です。
 
 ただ移転しないだけなら、そもそもこのエピソード全体が必要ありません。
 
 それをわざわざ、「移転しようと思ってたけどできなくなったよ」という話にするのは、
765プロはこれからも(アイドルがみんな売れっ子になっても)、ずっと雑居ビルの事務所だよ!」
 というスタッフのメッセージを感じます。
 そして、憎まれ役としての黒井社長もまた不滅である……という。
 
 ニコマスで描かれ続けてきた「学生サークルみたいな765プロ」は、逃げではなく、それで良いのだ、春香さんや他のアイドル達も、みんなそんな仲良しで居心地の良い765プロを求めているのだ……と、承認されたように思います。
 
 ……いや、本当にそれが逃げでないのかはわかりませんが。
 それに、アイマス世界はサザエさんドラえもんと違って、ずーっと同じ状況が続くわけではありません。
 いずれはそこから「卒業」していくアイドルもいるかも知れません。
 美希とか。
 
 でも、そうなっても、「765プロ」自体は(たるき亭の2つ上の階に)存続し続け。
 そして春香さんはその一員として、いつも楽しそうにみんなの世話を焼いているのであろうな、と思うのでした。
 少なくともまだ当分の間は。
 
 春香さんは普通の子です。
 
 そう揶揄されることもありますが、むしろ、それはその感性がファンの思いに近いということであり、春香さんの最も愛すべき特質なのだと思います。

*1:LV3の765プロは、オフィス風景から考えて、下手をすると名前を覚えきれないほどの社員を抱えていそうなのですが、ニコマスでそういう765プロは私は見たことがないです。